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<前略>
「あっ、やぁ、な、なか、に……っ」
コンドームを装着しているのだからじかに中に出されたわけではない。なのに、僕の中にある楔が大きく震えておびただしい量を放ったのが分かった。存在感のあるものが満足げに震えながら質量を変えていく。
体重をかけないように圧し掛かっていた身体がゆっくりと離れ、僕は荒く呼吸を繰り返しながらのろのろと身体を起こした。自分の下半身を見れば一緒に達してしまったようで、ゴムが外れないうちにと慌てて後始末をする。コンドームの中にたまった体液は色薄く、僕は小さく苦笑しながら口を縛った。
(朝もやっちゃったし、そりゃあ量も少ないよな)
今日はもう使い物にならないだろうシャツを丸めて隅に置き、使い終わったコンドームと袋を手に事務所の引き出しを開ける。僕の所作をじっと見つめている神乃木さんの視線には気付いていたけれど、濃いセックスのせいで手も足もひどく億劫で、相手をしてやるほどの気力が沸いて来なかった。
「なぁ、龍一」
デスクの引き出しから未使用のタオルを取り出して身体の汗をぬぐう。事務所の個室で全裸のままセックスの後始末。不道徳このうえない自分のさまに、やれやれと息が落ちる。けれど後悔はないのだ。この人に求められれば、僕は何度でも身体を開くだろう。
(特に今は……幸せだと、呑田さんもアナタも僕も皆が幸せだと、実感させて欲しかったから)
中の空気をどうにかしようと、空気清浄機のスイッチを入れたところで、もの言いたげな視線にぶつかった。
デスクの引き出しから出した予備として置いてあるシャツをまとい、仕方なしに相手をしようと神乃木さんの側に戻る。
「いつまでそんな格好でいるんです、風邪をひいちゃいますよ」
裸の上半身にはまだ汗が光っていて、綺麗に隆起した筋肉をより美しく見せ付ける。荒々しく呼吸を繰り返す腹部も、立てた膝に乗せた太い腕も、むせかえるような男臭さを垂れ流しにしていて正直目線の位置に困る。ましてや、前をくつろげたスラックスの間からは萎えた自身を出したままにしているのだ。
「もう一回しようぜ」
「駄目です」
馬鹿な提案を一言で却下すると、断られると分かっていたのだろう、口元に笑みを浮かべたまま目を細める。
「じゃあ、チューしてくれ」
「……チューってアナタ」
情事のあとは普通ならば虚脱感や白々した空気があるはずなのに、何がどう回線が壊れたのか、神乃木さんは浮いた雰囲気で明るく笑う。
「どうしたんですか、神乃木さん?」
未使用のタオルをもう一枚取ってきて、汗に濡れた肩に当ててやる。布越しに感じる筋肉の動きに、またしても熱を与えられそうな気がして慌てて離れた。
「元気に動いてやがるからもう一発出来るかと思ったんだがな、俺のコネコはケチだぜ」
「ケチじゃありませんよ、神乃木さん。アナタからのお誘いなら基本的に拒みませんけど、時間と場所は選びましょうね」
濃厚なセックスを交わしたというのに身体にひずみが残っていないのは、神乃木さんがとても大切に僕なんかを抱いてくれたからだ。愛されているという実感は言葉以上にその行為で与えてくれる。
「時と場所を選べねぇほどアンタが魅力的なんだがな」
仕方ねぇ、と小さくぼやき、神乃木さんはゆるゆると身体を起こした。
そのまま僕の肩につかまって、背筋を伸ばす。しなやかな筋肉の動きはとても綺麗で、僕を愛してくれた身体がどんなに美しいかを今更ながらに実感した。
「可愛かったぜ、龍一」
動きを止めた僕の頬にちゅっと軽いキスを与え、神乃木さんはくつろげていた前を整える。
<省略>