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逆転裁判。
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一番にするのは、シブ閲覧です。
やーすごいね。最近のは小説とかも投稿できるんだね。
わたくしめ、文字しか打てないものですが、これならイケルんじゃね?とうっすら思っちゃいました。
だって、おくさま!ノンナルがあったんですよ、ノンナル!
ちょっおまっえっなにこの極楽!
ノンナラーがいたことにびっくり!仲間発見にどっきり!!素敵作品にうっとり!!!
もーなに。わたし大好物よノンナル。どうしたらいいのさ、この熱い高ぶり!
ってことで、突発的ノンナル。
いってみようミ☆




 ちんまいビーカーに水を入れる。ある程度まで入れた後、スポイトで一滴二滴と落としていく。
 やがて限界近くまで収まった水は、表面張力のおかげで溢れそうな部分でふるふると震え。
 もう少し、と思って一滴加えると、途端にビーカーのふちをツーッと流れ落ちた。
「……何やっているんですか、呑田さん」
 かけられた声にちらりと視線を投げると、龍一がドア付近で間抜けな表情を浮かべて突っ立っていた。
「お前と俺とちなみのこと、考えてな」
「僕たちのこと、ですか?」
 龍一は研究室に足を進めると、俺の隣に椅子を持ってきて座り込む。
 俺一人でシンと静まっていたところへ、暑苦しい格好の龍一が入ってきて、一息に場の空気がぬくもる。
「お前、なんだよ、そのセーター」
「さっき、ちいちゃんにもらっちゃったんです。僕にはピンクが似合うからって手作りで作ってくれて」
 龍一は目にも鮮やかな真っピンクのセーターを着込み、へらととぼけた顔で笑う。そのだらしのない表情にチッと舌打ちし、俺は目の前のビーカーに視線を落とした。
「似合わねぇ」
 きっぱり切り捨てた俺の背中に、ぺたりと体温が寄り添う。 
 俺の言葉に傷ついた龍一がすねてひっついてきたのだ。
 白衣ごしに伝わる体温は冬のこの季節とてもここちよくて、だからこそ俺はわざと肩を揺すって追い払った。
「邪魔だ、暑苦しい。大体、この部屋は暖房を入れているんだ。毛糸のセーターなんざ見ているだけで汗が吹き出ちまう、さっさと脱げ」
 くるりと椅子を回転させて龍一を見上げて言い切ると、せっかくちぃちゃんにもらったのにとぶつぶつ言いながらセーターを脱ぐ。
(毒針でも仕込んでるんじゃねぇだろうな)
 性格だろう、脱いだそれを丁寧に畳む龍一を見ながら、俺は内心小さくつぶやいた。
 美柳ちなみは人に何かをプレゼントするような優しい心根は持っちゃいない。その中には常に打算と計算が満ちていて、どうすれば自分の利益になるのかをいつも考えているのだ。それは一時期付き合いのあった俺が十分知っている。仮に何かの意図があってプレゼントをするとしても『手編みのセーター』などを贈るなどありえない。
(今度は、何をたくらんでやがるんだ?)
 俺と付き合っていた頃も、色々とその目には狡猾な獣の色があった。 
龍一の隣にいる時は大きな分厚い猫をかぶっているのか、その色を見かけたことはないが、コイツのしているペンダントをいつもいつも欲しがるところもおかしいと言えばおかしい。
「呑田さん、コーヒーいただけますか?」
「勝手に淹れろよ」
「えー面倒です。呑田さんのおいしいコーヒーが飲みたいなぁ」
 小首をかしげて笑われ、俺は髪をかきながら立ち上がった。
 セーターを脱いで肌寒さに一瞬震えた龍一をストーブの近くに押しやり、置いてあったヤカンを手に棚のビーカーを二つ取る。
「呑田さん、僕、思ったんですけど」
 冷凍室に保管していた豆を取って戻り、紙フィルターに手早くセットする。スティックシュガー二つとポーションを投げると、龍一はありがとうございますと深く頭を下げた。
「何を思ったって?」
 勢いよく湯をそそぐと、コーヒーの良い香りが広がる。子供味覚の龍一のために用意したブレンドは、酸味が少なく甘みが多い。
「機嫌、悪いですか?」
 龍一の前に置いたビーカーに淹れ立てのコーヒーをそそぎ、自分の分も用意する。わざと龍一から一番離れる位置に座ったというのに、考え無しなお子様は何気なく席を立って俺の隣に尻を置く。
「今頃気付くな、馬鹿」
 テーブルの上に腕枕を作って顔を伏せると、龍一の手が肩にのっかかる。寄せられた身体からは体温が伝わってきて、俺はじわりと胸内が濡れるのを感じた。
「どうしたんですか? 僕でよければ、話、聞きますよ?」
 
 馬鹿な男。ちなみの見かけにだまされた、哀れな男。
 こんな馬鹿は死ななきゃ治らない。いや、死んでも治らないかもしれない。
(……死なせや、しねぇよ)
 
 馬鹿だけれど、可愛いのだ。哀れだけれど、いとしいのだ。
 龍一がこうして、穏やかに笑ってさえいてくれるのなら。
(俺は、すべてを捨てたっていい)
 命をかけて、馬鹿で可愛い、哀れでいとしい男を守ってみせる。
「何でもねぇよ、それより付き合え、龍一。休憩がてら、飯でも食いに行くぞ」
「ホントですか、それじゃあ、こないだ行ったところにまた行きたい」
 くしゃっと髪をかき乱してうながすと、龍一は嬉しそうに目を細めた。
 その肩を押しやって、研究室を出る。
 視界の隅には、ピンク色のセーターと――水の溢れた、ビーカーが一つ。

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