りはびり。
それをトラウマと自覚していないのに無理やり自覚させられるのはかなりきつい。
と思い知った今日でした。いや、色々ありまして。
明日は日直がんばろー。
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【50音で愛を囁け!】ばとんより。
い→いきなりですが、金縛りにあっちゃいました。
秋になっていきなり寒くなって。
あと、仕事仕事で忙しくて満足に休めなくって。
多分、色々な要因があったと思う。
(でも、こんな体勢の時に金縛りに遭わなくてもいいと思うんだけどなー)
仮眠をしようと、ソファにごろり横寝して。
ちょっと寒かったから自分で自分を抱きしめるように身体を丸めて。
十分経ったら仕事を再開しなきゃとか考えながら、まぶたを閉じたのまでは覚えている。
そして、ふと気づいたら、身体がそのまま動かなくなっていた。
(金縛りって久しぶりだなー。初めて知ったよ、昼間からなっちゃうものなんだ)
いつもなら怖い怖いと思うのに、仕事疲れで麻痺した頭はぼうとどうでもいいことを考えるばかり。
ためしに指先に力を入れようとしても、どうやって筋肉に命令を与えるのか忘れたようで、1ミリたりとも動かない。
いつもなら事務所の外を通る車や人の声が聞こえるはずなのに、世界から音が消えて僕以外の誰も存在しないみたいだった。
(静かだなー。耳鳴りが轟音みたいに聞こえる)
ゴウゴウと風がうなるような音は耳鳴りだと思う。
窓とか開けていないから、風とか入ってくるはずないから。
(金縛りってどうやって解くんだっけ)
怖くはないけれど、依頼人は怖い。複数の依頼を抱えているせいで、予定がかなりキツキツでやばいのだ。
頑張って頑張って、ためしに目に力をいれてみると、ちょっとだけまぶたが動いた。ほんの少し開いたそこには、幽霊の姿はなく、雑然とした事務所の様子が見て取れた。
(あ、あのボールペン、あそこに落ちてたんだ)
いつもと違う視点を通すと雰囲気まで違って見えるから不思議だ。
なんとなしに見ている中、デスクの下に転がっていたペンがふわりと浮かんで、ペンたての中におさまった。
――相変わらず片付けが下手ね、なるほどくん。
声が、聞こえた気がした。
ゴウウゴウウと渦巻く音の中で、優しい声が聞こえた。
――あんまり無理するんじゃねぇよ、龍一。
頭を、なでられた気がした。
ぐしゃぐしゃと乱暴に、でも愛情を込めて、大きな手でなでられた。
身体が動かない。指一本動かせない。
だから、起き上がって確認することも、何もできないけど。
(でも、分かる。僕を心配して、きてくれたんだ……)
大切な人たち。大好きだった人たち。
声だけで、手だけで、たったそれだけで分かるくらい、そばにいてくれた人たち。
(千尋さん、呑田さん……)
たとえ姿が見えなくても在りし日の笑顔は美しく蘇る。
(大丈夫だよ、僕は。まだ大丈夫)
決してピンチの時じゃないけれど、ふてぶてしく笑い返してみせる。
与えてもらった強さが僕を支えてくれるから。
――頑張れよ。
――頑張ってね。
しびれるような金縛りが、ゆるやかに、とけていった。
「どうしたの、なるほどくん」
「まるほどう、こんなところで寝てると風邪をひいちゃうぜ」
声に目を開くと、ゴドーと真宵の姿があった。
「あー、仮眠を取っていたんですが、熟睡してしまったみたいです」
「そうなんだ。見てみて、なるほどくん! 神之木さんがたい焼き買ってくれたんだよー」
「今日はいやに寒かったからな、特別だぜ」
目をこすりながら返すと、二人ともに笑って手にしたたい焼きの袋を見せてくれる。
「うわー、おいしそう。ありがとうございます、ゴドーさん」
空腹を感じて腹をさする。そういえば、まともに食事をした記憶もなくて、今までかなり無理をしていたのだと改めて気づいた。
「うん? まるほどう、アンタ何かあったのかい? いやにすっきりした顔をしているじゃねぇか」
ぐっと顔を近づけて言うと、ゴドーは手を伸ばした。そうして、ぐしゃりと髪の毛をかきみだす。
「身体を休めるのはいいことだぜ。あまり、……無理をするな」
その声は優しくて、その手は大きくて。
(千尋さんや呑田さんと、同じだ)
金縛りも悪いものばかりじゃないな、なんてなんとなく思った。
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ってことで、カプなしですが。
こないだ金縛りにあった記念(?)です。
や、こんな優しい金縛りじゃなかったですけど、うん。こわかったですけど、はい。
呑田さんや千尋さんはいつでもなるほどくんを見守っているということで。
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